第1.4 「臨機応変の戦略」の内容

4 「臨機応変の戦略」の内容

臨機応変の戦略とは?

「臨機応変の戦略」は三つの原則から成る (1.4.1)

 

さて、このように「彼」を知り「己」を知って、比較衡量し、結果的に「じゃあ、一丁受けてみるか」ということになったとき、ここで役立つのが、このサイトでお勧めしたい「臨機応変」の戦略です。

 

これは、先に述べた「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」という教えを、噛み砕いて、再構成したものです。

 

まず、孫子の教えは、これまで見てきたように

 

「彼を知る」――敵国の強さをはかる
「己を知る」――自国の強さをはかる
「百戦して殆うからず」
――両者を比較して敵国が自国よりも強ければ戦わない。自国と敵国が互角でも戦わない。戦うときは、自国が敵国よりも圧倒的に強い場合である。よって、百戦しても絶対に負けない

 

ということを意味しています。
さて、こんどは、これを特定の敵(試験など自分に課せられた課題)に打ち勝つための戦略として再構成します。前提として、まず

 

第1 「彼を知る」――敵のレベルを把握する
第2 「己を知る」――自分の実力を把握する
第3 両者を比較する

 

という作業を行います。この結論は、通常、初期段階では、次のようになるはずです。

 

第1 「彼を知る」――敵のレベルは「大きい」
第2 「己を知る」――自分の実力は「小さい」
第3 両者を比較すると「自分の実力は、敵のレベルに不足している」

 

彼は大きい、己は小さい

 

しかし、これでは勝てません。そこで、次のような戦略を考えます。

 

第1 敵を小さくする方法を考える。
第2 自分を大きくする方法を考える。
第3 自分の実力の不足を補って自分の実力を有効に活用する闘い方を考える。

 

このうち第1と第2の戦略で、まず敵と自分の実力差を縮めます。もしこの時点で実力差がなくなったり、さらに逆転したりするならば、幸運です。第3の戦略は不要かもしれません。しかし、もしまだ実力が不足しているとするならば、それを補うことが必要です。これが第3の戦略です。

 

臨機応変の戦略の3原則

 

もちろん、ここに大々的な実力差が存在するならば、この第3の戦略によって勝つことはできません。例えば、冒頭に例として挙げたスーパーマンと戦った悪党などは、どんなに空手のワザを身につけたとしても、どんなに新たな武器を持ってきたとしても、スーパーマンにはかなわないでしょう。圧倒的な実力差を、ワザ、武器、戦法などによって逆転させることは、ほとんど不可能です。

 

しかし、私たちが経験上知っているように、体力が拮抗していたり、そこに体力差があったとしても、それが、所詮人間同士の「ドングリの背くらべ」程度の差であれば、それはワザ、武器、戦法などによって逆転することができます。

 

そうなると、問題は、どんなワザ、武器、戦法などを用いるかであって、これこそが「臨機応変」の戦略の真骨頂です。つまり、その状況に最も適するワザ、武器、戦法などを開発して用いるならば、それは、最も少ない労力と時間とによって、最大の効果を発揮する、ということです。

 

これが「臨機応変の戦略」の内容です。

 

そこで、次章以下では、この「臨機応変の戦略」の形成するこれら3つの原則について、さらに掘り下げて考えてみることにしましょう。


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